トイレの密室性
日本の公衆トイレはキレイだ。恐ろしいほど綺麗だ。最近ではおしり洗浄機能が付いているのが普通だし、音をかき消す装置があると思うと便座シートも自動で替えてくれたり。オムツはこれに入れてねってビニール袋を置いてくれているところもあれば中で着替えをしたい人用に床に足をつけずにすむ台まであったりする。とにかく至れり尽くせりだ。
そんなトイレ事情に甘やかされている日本人がアメリカのトイレを使うとどうなるか。自由の国アメリカは実はホラーハウスのような、想像を絶するトイレが存在する国なのだ。
サービスエリアからコーヒーショップに至るまで、かなりの頻度で使いたくない度が高いトイレに遭遇する。まずないけれど仮に日本のトイレのように除菌スプレーをトイレットペーパーに吹きかけて綺麗にしてからお座りくださいなんてあっても、スプレー液なんて効果がなさそうなほど汚れているし大体スプレー液のついたペーパーででも触りたくない!というくらいスゴイ場合もある。大体そんなスプレー液の容器があったら壊されているか中身が補充されていないのがオチだな。
そして何よりも渡米したての日本女子だった私を苦しめたのはドアの間のギャップ(隙間)だ。だって外を通る人が見えるのだ。ちょっと見えるんじゃなくてしっかり、どんな人かわかるくらい。若くて今よりも繊細な神経の持ち主だった私はホストファミリーと教会に行こうがショッピングモールに行こうが、要はどこの公衆トイレに入ろうが存在するトイレのドアの大きなギャップに悩まされ、トイレに座ってから10分くらい用がたせない(外が見えるのが気になって出るものが出てこない)体になってしまった。慣れるまでに半年以上かかった。
どうしてこんなギャップがあるのか?それに日本のトイレなら床からかなり高いところまでしっかり閉まるドアがあるのにアメリカのトイレは床から30センチくらい開いているの?現に4歳のうちの息子は春の渡米時、無邪気にこの30センチからかがんで中を除きそうになり大慌てで止めたのだった。
以前から聞いていた理由は、不法ドラッグの使用をなくすための対応というものだった。ちょっと検索してみると、他にも
・救急救助しやすい
・危険な状況に陥った際に逃げられる
・掃除しやすい
・作るのに安くすむ
更には
・中でのセッ○○を防ぐ為
なんていう理由も。どれもわからなくはないけれど、日本人の感覚からするとハテナマークである。
さて、アメリカン•トイレの恐怖をお伝えしたけれど、日本にも公園や駅のトイレなど入りたくないものが未だ存在する。アメリカ人から見たらトイレットペーパーがないなんていうのはありえないし、ペーパータオルもハンドドライヤーもないトイレはハンカチを持ち歩く習慣がないアメリカ人からすると手を洗ってから
「ありゃ?どうしたらいいのん?」
ということになる。私のアメリカ人の友人はバーベキューをしに行った浜公園のトイレ(昔からある、コンクリートの建物の日本式トイレ)を一目覗いてすっかり怯んでいた。彼女には蛾がいっぱいのホラーハウスだったようだ。(あのトイレは私もゴメンだけど。)
昔、青少年の船で共に旅した友達が中国で
「トイレのドアなかったし、ペーパーカラカラやったら30センチくらいまで!ってめちゃくちゃ怒られた」
と興奮して体験を語ってくれた(私は返還前の香港組だったので同経験はしなかった)。インド出張の時はバケツと水道ホースに戸惑った。世界のトイレ事情はさまざまだけど、日本人がかなり甘やかされているのは間違いない。