自分に忠実なシンガー、ヘイリー・ラインハート
ポッドキャスト「Meg for Life Songbook 〜オンガクのオモイデ〜」☝︎(Anchor・Spotify・Apple Podcasts・Google Podcasts・Amazon Podcast でお聴きいただけます。)
今月ピックアップしたアーティストはアメリカの人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」のシーズン10で3位に輝いた Haley Rainhart (ヘイリー・ラインハート) 。シーズン9では予選で敗退してしまったけれど、次のシーズン10でカムバックしたガッツと才能の持ち主だ。シーズン10でエアロスミスのスティーヴン・タイラーが審査員に加わったのも彼女の運命を大きく変えるきっかけになった。スティーヴンは最初からヘイリーの才能を見抜いてアメリカンアイドルの放送終了後もずっと連絡を取り合い、遂にヘイリーはスティーヴンのショーにオープニング・アクトとして登場するまでになったのだから。
まずはヘイリーのディスコグラフィーから。2011年のアメリカンアイドル・シーズン10の後、ヘイリーはインタースコープ(レコード会社)と契約し、2012年にデビユーアルバム『Listen Up!』をリリース。収録曲の殆どを彼女自身、もしくは共作で作り上げたという。
2枚目のアルバムは2016年の『Better』。
3枚目のスタジオアルバム『What's That Sound?』は2017年にコンコード・レコードからリリースされている。
4枚目は2019年の『Lo-Fi Soul』。
最新作は昨年(2022年)のEP『Off The Ground』
1枚目と3枚目以外のアルバムはインデペンデント(メジャーなレーベルと契約をせずに独立してリリース)だ。
ヘイリーはメジャーとの契約を全く否定するわけではないらしい。なので将来的に機会があればメジャーとの契約もあり得るかもしれない。けれど自分らしさや自分の作品に忠実であることを貫くのが彼女にとってはとても大切なことで、そうである為にインデペンデントの道を選んでいるそうだ。そういうアーティストは案外多い。その昔、ニューヨークでミュージックビジネスを学ぶ学生だった頃、論文の情報集めにメジャーレコード会社の偉い方にインタビューさせてもらったことがあった。ある大物ミュージシャンの話をしていた時、彼の口から確かに
「あのアーティストは言うことを聞かなくなったので」
という言葉が出たのを鮮明に覚えているが、そういうことなのだ。ヘイリーが尊敬するアーティストに クリスティーナ・アギレラ、 コリーヌ・ベイリー・レイ、エスペランサ・スポルディング、ジャネール・モネイなどを挙げている理由も「メインストリームに媚をうらない」からなのだそう。かっこいい!
アメリカン・アイドルで有名になったヘイリーはスコット・ブラッドリー&ポストモダン・ジュークボックスとの数々のコラボレーションで更に評価されるようになった。中でも2015年の『Creep』が有名なので是非お聴きになってほしい。
「ほおぉぉ!レディオヘッドのあの曲がこうなるか!」
と唸ってしまうこと間違いなしだ。
更に同年、エルビス・プレスリーの “Can't Help Falling in Love” のカバーがガムのコマーシャルで使われ大ヒット。リリース3年にして Spotify のストリーム回数が1億5千万回、YouTubeのビュー数は7千万回という偉業を成し遂げ、RIAA(アメリカレコード協会)からプラチナ認定を受けた。
そしてそして。私のお気に入りはというと、ジュラシックパークなどへの出演で活躍する俳優のジェフ・ゴールドブラム率いるザ・ミルドレッド・スニッツァー・オーケストラとの共演!ジャズに精通したジェフのデビューアルバム『The Capitol Studios Sessions』(2018) でヘイリーは2曲歌っている。そのうちの “My Baby Just Cares for Me” はライブ映像がとにかく楽しくて事あるごとに見てしまう(だから書くのが進まない、苦笑)。
2019年には Mazda3 の広告キャンペーン “Dream Bigger” でクランベリーズの “Dreams” を歌っている。好きな歌だし私も愛車は Mazda なのでここでまたコマーシャル鑑賞タイム(本当に進まない…)。
ヘイリーの音楽に焦点を当ててきたけれど、実は彼女は社会貢献活動にも積極的に参加している。ずっと周りの友達の相談を受けたりアドバイスをしたりして育ってきた彼女にとって人を助けることは自然な事なのだそうだ。
「皆そうしなきゃいけない。いいバイブ(エネルギー)やメッセージを送り出して助けることを。」(Hollywire の記事の一部を引用した Wikipedia の記事を参照、筆者訳)
アメリカン・アイドルに出演する前には4年間ウォーターパークのライフガードをしていたそうで、他にも様々な方面で才能を発揮し活動を展開しているヘイリー。Netflix の “F is for Family” というアニメでは声優に挑戦しているし、同じくNetflix の “We Can Be Heroes” では女優として出演している。最新アルバム『Off The Ground』のタイトル曲はミュージックビデオがショートフィルムになっていて二役をこなす彼女からの熱いメッセージが込められている。これからも益々活躍が楽しみなヘイリー、早く来日して欲しい!
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