夏の風物詩、フリーコンサート

北半球での本格的な夏の始まり、夏至。それに先立つ5月最後の月曜日、非公式ながらアメリカでは一般的に「夏のはじまり」として知られるメモリアル・デー(Memorial Day)がやって来る。

ニューヨークのレコードレーベルで働いていた若かりし頃の話だが、このメモリアルデーあたりになると職場で毎年必ず同僚の誰かからEメールで送られてくるものがあった。その年の夏のフリーコンサートを網羅したリストだ。

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レコード会社の社員は 自身がミュージシャンだという人間も多いしとにかく音楽好き集団なのだ。誰かがリストを見つけては全社員に送ってくれる。
「今年はどれにいく?」
なんて情報交換したものだった。

主催する団体も複数あり、ニューヨークシティ中で毎日のようにフリーコンサートが開かれていた。だから平日でも仕事が終わると一目散にコンサートのある会場に向かったものだ。マンハッタン内はもちろん、ハーレムもブルックリンの奥の方も、面白そうなのがあればひとりででも行った。ハドソン川沿いやバッテリーパークで夕日を見ながら聴くライブは最高だった。ジャンルも様々で、クラシックからロック、ポップ、ジャズ、ワールドまで何でもあった。Tokyo2020オリンピック開会式にも登場した Angelique Kidjo はどこで聴いたっけな。いつ行ったか、誰と行ったか、全部思い出すのは到底無理だなぁ。

数あるコンサートの中でも見逃せないのはセントラルパークで毎年行われるニューヨークフィルハーモニックのサマーコンサートだ。毎年、このニューヨークフィルを皮切りに夏のコンサートシーズンが始まる感じ。セントラルパークにはグレートローンという広大な芝生のエリアがあってそこが会場だ。このグレートローンは13エーカーのオーバル型のエリアでソフトボール場が6つ入る大きさだそうだ。通常は6万人ほどの観客がこの野外コンサートを楽しみに集まるが、1986年にはなんと80万人を記録したそうだ。

まだ独身だったある年、女友達だけでワインと美味しいものを持ち寄ったのを思い出す。あれだけ人がいると遅れて来た友達との合流がちょっと大変だったりするけれど、早く仕事を終わった人が十分な広さの場所取りをしてくれてあってなんとか10人程が無事に集まることができた。ところでアメリカではお酒類を公共の場で飲んではいけないので、(この日はお巡りさんも多少は目をつぶってくれるとは思うけれど)皆ワインのボトルは包んで隠すとか水筒に入れて持ってくるなどする。夕暮れ時の空気を満たすニューヨークフィルの音色、芝生の香り、そして美味しいお酒とおつまみに気心知れた友達!もうサイコー!

因みに、近くで聴く人たちほど真剣に、静かに聴きたい人たちで子供がいたり賑やかなグループは後ろの方。巨大スピーカーがいくつもあるので音楽が聴こえないことはないが、あまりうるさくしていると近くのグループから怒られてしまう(音楽を聴きに来ているのだから当たり前だが)。

コロナ禍で過去2年は行われなかったこの野外コンサートだが「脱コロナ」色が濃くなってきた今年は再開されたようで、友達がFacebookに写真をポストしていた。思わず
“This I miss so much!” (「これはすごーく恋しい!」)
とコメントしてしまった。


ニューヨークフィルの音色をどうぞ☟

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