貧乏パスタ

ニューヨークで貧乏学生生活を送っていた頃の話。学生仲間たちは大抵がブルックリンなどにある、若者が多く小洒落たエリアにアパートを借りてルームメイトと住んでいた。一方、日本の就職先を辞めて自費で留学した私は、彼らの親が払っているような高額な家賃を払うことはできなかった。平日は睡眠3時間でモーレツに勉強とインターンシップに励み 、週末にバイトで生活費を稼ぐ生活だったから贅沢はできなかった。

ニューヨークで貧乏学生生活を送っていた頃の話。学生仲間たちは大抵がブルックリンなどにある、若者が多く小洒落たエリアにアパートを借りてルームメイトと住んでいた。一方、日本の就職先を辞めて自費で留学した私は、彼らの親が払っているような高額な家賃を払うことはできなかった。平日は睡眠3時間でモーレツに勉強とインターンシップに励み 、週末にバイトで生活費を稼ぐ生活だったから贅沢はできなかった。

当時私は、マンハッタンの小さなアパートにソフィアおばさんというルームメイトと住んでいた。そのいきさつは昨年出版した『Oh My Roomie: ニューヨーク・グラマシーの事件簿 』にある通りだが、いつか一人暮らしをしたいなぁなどと夢見つつも、当時の生活にはとりあえず満足していた。根性で探しあてた、格安かつマンハッタンの便利な位置にあるソフィアおばさんのアパートに住んでいたからだ。徒歩で通学もできてしまうそのアパートに住んでいれば交通費だって節約できた。顔に穴が開くんじゃないかというくらい突き刺す寒さの冬の日や、日本の蒸し暑さに引けを取らない真夏日には、待ち時間もあり多少不便だが空調の効いた学生用無料バスがあった。



家賃や電話代といった必要経費以外はなるべく使わない、というか使えない生活だった。幸か不幸か、一番の削りどころとも言える食費はかなり抑えることができた。何故かというと、まず、宿題や次の授業の準備が山のようにあるから料理している時間なんてない。そして、お腹いっぱい食べると教科書を読んでいても眠くなってしまうから食べることができない。いつも大好きな板チョコをかじったり、学校の近くのお店で買った巨大なマフィンを2回に分けて食べたりしていた。お陰で当時は体重を気にするなんていう事とは無縁だった。

しかし、元々は大食いの私、何かガッツリ食べたーい!という時もあった。そんな時によく食べていたものがある。その名も「貧乏パスタ」。そう呼ばずしてなんと呼ぶ。具材が何もない時に何となく作ったら美味しくてリピートするようになってしまったオリジナル・レシピだ。5個で1ドルというツワモノ、袋ラーメンと比べるとコスパは落ちるが、1ドル足すだけでワンランク上の気分が味わえる。

作り方は至って簡単。だしパウダーと醤油とマヨネーズにキメのガーリックブレッドというシーズニングを混ぜておいて、茹であがったパスタを混ぜるだけ。隠し味ともいえるこのガーリックブレッド・シーズニングは、もともと台所に置いてあったソフィアおばさんのものを拝借したのがきっかけで知った。衝撃の美味しさに次の日スーパーに探しに行き、それから手放せなくなってしまった。

早く作れて美味しくお腹も満足な貧乏パスタ。多忙で貧乏な私の強い味方だった。今でも時々ふと食べてみたくなる。素パスタはちょっと寂しいしベーコンくらいは買えるようになった今は健康のことも考えて具材を入れたりするようになったが、難点はガーリックブレッド・シーズニングが日本で手に入らないことだ。今度アメリカに行ったらまた買ってこようっと。

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