ベアベアとベアベア

息子が産まれる前にフォトグラファーである友人にマタニティフォトをお願いした。彼女からの提案で撮影にテディベアを持っていくことになった。夫いわく、
「赤ちゃんにはやっぱりテディベアだよね」
アメリカでは不動の人気があるテディベア、ぬいぐるみの王者というところか。あまり深く考えずに可愛いと思ったものを購入しそのテディベアに撮影に参加してもらった。

生まれてきた息子はちょうどそのテディベアのサイズ。いつからか私はそのテディをベアベアと呼ぶようになってベアベアは成長する息子の Lovey(いつも一緒の大のお気に入りのもののことでよくあるのはぬいぐるみや小さなおもちゃ、ハンカチや毛布やなど)となった。生まれてから撮った息子の写真に何度登場していることか。

ある日子育てウェブサイトで Lovey のことを読んでいたら、無くした時に子供がパニックになったので同じものを複数買ってあるという他のママたちのコメントがあった。そうだな、うちもまさかの時に備えておこうとバックアップのベアベアを購入しておいた。これが大正解。なぜなら、ベアベアはありとあらゆる場所に息子と出かけて床や地面に落とされたりヨダレがついたりでしばらくするとなんとなーく匂いがしてきて洗濯が必要になる。そんな時第2号くんの登場なのである。

さて、4歳の息子は今でもベアベアを溺愛している。幼稚園以外は大抵どこに行くにも
「クマちゃん行こう♡v
と連れて行くし、今日はいいと言うので家に置いて出かけるとあとで
「クマちゃーん(涙)」
と面倒なことになったりする。なのでそういう時は私の荷物に入れておく。そんな溺愛ぶりだから日本に移住後初めてのアメリカ旅行ももちろんベアベアは一緒だった。

そして事件は起こった。ノースカロライナのホストファミリーの家を訪ねていた際にベアベアが行方不明になったのだ。子供達が遊んでいたベッドの下や家の隅々まで探しても出てこなかった。前の晩に行ったレストランだろうか?いや、出た際に持っていたぞ。結局出発までに見つからず、さすがに私も海外旅行にまでバックアップを持ってきておらず、息子はピンチヒッターとして現地で購入した他のクマのぬいぐるみと帰国することになった。

日本に戻ればバックアップくんがいるので息子は再会(と思い込んで)を大喜びしたが、ママはちょっと寂しい気持ちだった。他のおもちゃならともかく、あのマタニティフォト撮影に参加したオリジナルのベアベアがいなくなっちゃった。でもきっとあのベアベアは自分の役目は終わったと思っていなくなったんだ、と思うことにした。昔私が渡米した際に姉からお守りにともらっていつも身につけていた指輪が帰国すると同時になくなってしまったように。きっと何か意味があってのことだろう。

帰国して1年ほど経ってベアベア1号のことも忘れた頃、ホストファミリーからベアベア発見のニュースが飛び込んできた。あんなに探したのにどこに?と聞くと、ベッドカバーに紛れていたという。ベッドの上も探したけれど、泊めてもらった部屋には他にもふたつベッドがあったしゲストがこない限りはあまり出入りがない部屋だから紛れたままになっていたのだろう。送ってくれるというけれど、また来年会いに行くからとっておいてと伝えた。そしてこの春の訪問で感動の(?)再会。息子は
「ベアベアがふたつ!どうして?!」
とかなり興奮していた。説明したけれど、前回の訪問時は幼な過ぎてあまり覚えていなかったようだ。日本に戻ってから暫くは2匹一緒ににお出かけしていた。そのうち、匂い(すごい見分け方)でこっちがいいと言い出し、その後少し進歩して Big nose・Small nose と鼻の大きさで見分けるようになった。Small nose くんが彼のお気に入りで、Big nose くんはママやパパに貸してくれる。

あまりに愛着のあるベアベア、実は三つ子だったということを息子は知る由も無い。全く新しいまま保管されていた3匹目のベアベア。そろそろ息子も大きくなってきたし、バックアップはなくてもいいだろうという判断で赤ちゃんが生まれた友人のところにプレゼントとしてもらわれていった。様々なストーリーを我が家にもたらしてくれたベアベアは赤ちゃんに最高の贈り物だと思うし、夫の
「赤ちゃんにはやっぱりテディベアだよね」
という信条(?)に基づき、うちでは友人のところに赤ちゃんが生まれるとテディベアをプレゼントしている。

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