オフィスでリハーサル

レコード会社で働いていた頃の話。仕事では音楽のビジネス面に徹していたが、プライベートでもご縁があってミュージシャンの友達と自らの音楽活動を始めた。ライブをしたり企業のパーティーに呼んで頂いたり。本来歌うのが大好きな私にとっては最高に嬉しく楽しい出来事だった。

最初はギターとボーカルのデュオでスタートしたので、デモの録音や練習はどちらかのアパートでしていた。これが音楽の街ニューヨークのとってもいいところで昼間だったら楽器の演奏をしても全く問題ないし、文句を言うご近所さんもまずいない。日本だったら昼間でもご近所さんを気にしなくてはならないものね。

しかし、仕事後の夜の練習だったり、キーボードにベースやドラムといった他のミュージシャンを招いてのギグのリハーサルなんかはかなり大きな音になるのでいくらミュージシャンに寛大な街ニューヨークでもアパートでするのは常識外れということになる。
「うーん、今度のリハ、どうする?」
ある時、皆のスケジュールと場所の調整がなかなかうまくいかなかった。ニューヨークのミュージシャンは収入がしっかり取れるように音楽以外の仕事をしている人も多い。だいたい皆昼間の仕事はマンハッタンで、ギグの予定が入れば仕事の後に演奏してからそれぞれ住まいのあるクイーンズやブルックリンや遠い人はニュージャージーとかまで帰っていく。皆の都合がつくようにするには仕事の後そのままマンハッタンで夜のリハというのが理想だなぁ…。

私はマンハッタンに住んでいたが、流石にバンドを招き入れて夜のリハはできない。かと言ってわざわざリハーサルスタジオを借りるのもねぇ…。その時、思いついてしまった。
「オフィスでやっちゃったら?」
ギターのAくんのオフィスはタイムズスクエア近く、私のオフィスはイーストビレッジでどちらも集まりやすいロケーションだ。更に、二人とも普段からかなりハードに遅くまで仕事をしていたので、それぞれ自分のオフィス事情には通じていてどの日のどの時間だったら大丈夫というのがわかっていた。実際にオフィスでのリハーサルを決行してみると、Aくんのオフィスでも私のオフィスでも誰にも邪魔されず快適なリハーサルをすることができたのだった。大きなウッドベースなんかが入るとスペース的にかなりキツキツではあったけれど、文句は言えない。最初はちょっとドキドキしたけれど、仮に他の社員に見つかっても別に何も言われなかっただろう。逆に頑張ってねくらい言ってもらえそう、それがニューヨークだ。(いくらニューヨークでも金融系とか弁護士事務所とかカチコチのコーポレートオフィスだったら難しいだろうけど。)

近頃、子育てもちょっと落ち着いて時間的にも精神的にも余裕ができた…というよりこれ以上歌わずに過ごすことがつらくなってきたので、サボりっぱなしになっていたギターの練習と一緒に再開し出した。隣が空き家でもう片方の隣が実家なので(裏の方、聞こえていたらごめんなさい!)昼間ならいいだろうと音を出しているが、ニューヨークの環境を思い出すと懐かしい。

更に、ミュージシャンの友達に囲まれていたニューヨーク時代はやはり音楽的にはこの上なく恵まれていたなぁと思う。あまりに素晴らしいミュージシャン友達に囲まれていたから頼りっきりで私自身のギターの腕は20年前の初心者時代から殆ど進歩がないまま。これでは盛り上がりに欠ける、というかものにならないよ(泣)。ギターはこのまま細々と練習を続けるとするが、仮にちゃんと弾けるようになるとしてもその頃には片足がお墓入りしているんじゃなかろうか。

という事で、焼津界隈で「ギター(もしくはキーボード)なら任せて!」という方、「ボーカルを探している」という方がいらしたら是非ご一緒させて頂きたい。

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