ニューヨーカーはパーティがお好き
ニューヨーカーはパーティーが大好きだ。週末ともなると何かと理由をつけて誰かがパーティーを開いている。
「この頃パーティーがないなぁ」
と思ったら、”Just because(ただ単に)”パーティーを自分で開いてしまう、なんてこともよくあるし、友達をひき連れて、パーティーのはしごをすることも珍しくない。
ある年のThanksgiving(収穫祭)には、3つのパーティーに招待された。Thanksgiving は家族で過ごすイベントなので、アメリカ人の友人はだいたい地方の両親のところに帰って行くけれど、海外出身のニューヨーカーにとっては友人たちと集まるイベントだ。まずはお昼時に1件目でターキー(七面鳥)やパンプキンパイなんかの、Thanksgiving につきもののお料理を頂く。2件目はおやつの時間帯(?)で同じく Thanks giving のお料理。3件目、夕飯、同じく。ひたすら食べるのが Thanksgiving だ。面白いのは、それぞれが違ったレシピでターキーを料理していて友達とおしゃべりをしながら食べ歩きをするような感覚に近いことだ。そして最後には重たいお腹を抱えながら帰宅する。
子供の誕生会も、子供が小さなうちは親同士の社交パーティーのようなものだ。とある日曜日、偶然にもふたつのお誕生会に招待された。ひとつは車がないと行けないニュージャージーのレストラン。もうひとつはうちの近所のご自宅。どちらかを選んでもう一方は遠慮するという選択もあるのだろうが、両方とも近しいお友達の子供だから顔だけでも出してお祝いをしたかった。なので、Zip Car という時間単位で借りられる車を借りてまずはニュージャージーに行ってからマンハッタンに戻って2件目にお邪魔した。ついた頃にはケーキもなくなっていたし、ミュージシャンも帰った後でパーティーはすっかり下火状態だった。
大晦日のパーティーは夜中スタートだから体力もいる。何件行ったかな?4~5件だと思うがもはや定かではない。1件目はブルックリンで、そこで知り合ったお友達が興味があるというのでその2人を引き連れ、更に他の友人と合流し、夫と私が毎年必ず行っていたセントラル・パークの花火を見ながらカウント・ダウン。その後もう2件行った後、タイムズ・スクエアが近い事に気付き、カウント・ダウン後のタイムズ・スクエアを見に行ってみよう!と紙吹雪とゴミの山の中を歩きながら最後はフラフラになって帰宅したのだった。その夜はどの地下鉄でどう移動してどこを歩いたか、さっぱり覚えていない。
そして、忘れもしないのはある冬の大雪のとある日。地下鉄も止まってしまうかもしれないくらいの大雪にも関わらず、ロングアイランド・シティの豪華な友人宅でパーティがあるからと誘われ、帽子・手袋・ロングジャケットと完全防寒のいでたちでいざ出陣!しかも現地のお友達宅は地下鉄の駅からかなり歩く距離だった。深~い雪、こんな日は他に誰も出歩いていないから膝くらいまであるまっさらな白い雪の上をエッコラエッコラ歩きながら私たち一行はパーティをやっているおうちへ向かう。ファッション・デザイナーだという女主人のその豪華なアパートには、私たちと同じようなパーティー魂を持つ人たちが集まっていた。しかし、地下鉄が閉鎖して帰れない可能性も大いにあり得るというのに、今思い出すと自分でも呆れてしまう。けれども、雪でも嵐でも面白いイベントがあると出かけて行くのがニューヨーカーなのだ。
夫と私がマンハッタンの FiDi(ファイナンシャル・ディストリクト)にあるアパートに引っ越した時に開いた House Warming(お引越し直後にゲストを招いて寒々しい新居を温めてもらうというパーティー)には多くの友人たちが集まってくれた。その数40人!ベランダがあるとは言え、そして広めの部屋とはいえワンルーム。とにかく人口密度が高い上に、多くの人に食べてもらおうとオーブンをフル活用していたので暑い!これじゃあ Warming じゃなくて Heating だよ…。真夜中に差し掛かる頃、ある友人から電話があった。
「今友達と近くにいるんだけど、今から行っていい?」
「OK!お友達何人?結構いっぱい来てくれてて。」
「10人なんだけど…」
「ごめん、ムリ」
その友達は、どうにかメンバーを4人に絞って1時間後にやって来た。もちろんお開きは明け方だった。
息子の1歳の誕生会はセントラル・パークの芝生の上だった。前の晩お友達が手伝いに来てくれて、真夜中までかけてサンドイッチ、おにぎり、唐揚げなんかを70人分用意した。凝り性の夫なんぞは流行りのケーキポップを1週間前から仕込んでいた。仕事から帰宅して、息子が眠ってから夫とふたりで作ったミニオンのケーキポップ。平和で静かな焼津での夜、凄まじきニューヨーク社交生活を懐かしく思い出す。