Liquid Eggの怪
所変われば品変わる。食生活も。
このホリデーシーズンも、夫は日本に帰国している間に大好きな日本の食事を満喫していった。このご時世に国際線を利用しての旅は大変で、彼は出国前・入国後と合わせて5回のコロナ検査を受けてやって来た。その上、3週間の滞在中2週間は自宅待機だったのだから
「せめて美味しいものでもたくさん食べてリチャージしてって!」
と私も調子に乗りすぎて、去年に引き続き体重計の針が大きく右に振れる現象が起こってしまった...。
さて、実家でテレビをつけながら団欒のひとときを過ごしていた年末のある日。食糧を無駄にするかわりに困っている人々に寄付をするという海外での取り組みを取材する様子がテレビに映った。アメリカからの映像で、歩道の脇に冷蔵庫が設置してあり誰でも余った食料を入れてよく、必要な人は中のものを持っていっていいというものだ。家庭やお店で余った食べ物を寄付する人々にそれをありがたがってもらっていく人々。画面にはある人が冷蔵庫を開いて何かもらっている様子が映った。牛乳パックのようなその容器を目にした私の家族はそこに“Liquid Egg”と書いてあるのを見逃さなかった。
「うわっ!ナニそれ?!」
アメリカに住んでいた私にとっては今でこそ馴染みのある品だけれど、初めてその存在を知った家族にはセンセーショナルだったようだ。
確かに、私も最初に見た時ははかなりの衝撃を受けた。それは留学生として寮に入りたての頃。留学生は体調管理の面を考慮して全員ミールプラン(食事券)を購入して学食で食事をしなくてはならなかった。セルフサービスのカフェテリアで、温かいものは目の前で作ってくれた。ある時、オムレツをオーダーするとシェフのおじさんがコンコンと卵を割ってシャカシャカ混ぜるかわりにシャンパンクーラーのような入れ物に入っている黄色の液体をお玉ですくってフライパンに入れた。その時はそれを見て
「へぇ~、時間短縮のためにあらかじめ卵をいっぱい割って混ぜておくんだぁ」
と不思議に思いながらも感心したのだが、後日Liquid Eggをスーパーで見つけて
「えぇぇ~?!アレはコレだったのか!」
と、そういうものがあること自体に驚いたものだ。卵を割って混ぜるだけの動作を省略するためのもの?本当に中身は純粋な卵なの?一瞬にして疑問が頭の中をグルグル回った。そのうち見慣れてしまったけれど、一度も使ったり購入することはなかった。
その他にも、シリアルのセクションだけでひと通路埋まっていたり、アメリカのスーパーは最初の頃面白くて仕方がなかった。ターキー(七面鳥)のハムだってあるし。
「ゲっ!これ食べるの?!」
と思わず声に出したくなるほど合成着色料をふんだんに使った色とりどりのケーキとか(真っ青なアイシングを見た時は私も真っ青になった)。どうりでうちの夫が日本のスーパーを面白がる訳だ。お義母さんが日本に来た時なんぞは10分かけて3メートルしか進まないのでスーパーだけで半日コースだったもの。
思い返せば他にもどんどん出てくる。そもそも日本を離れていちばん最初の食事から既に感動していたっけ。国際線の機内食についてきたクッキーに。
「わ♡`ョコチップクッキー!」
と頬張ると、初めて経験するふんにゃりした食感だった。それまでクッキーといえばサクッとしたものしか知らなかったから、これは驚きだったな。
インターンシップ時代に訪れた小学校で学校給食を頂いた時も。生徒が好きなものを選んでいいというのにも驚いたが、
「サラダをください」
と言うとレタス:ハム:チーズの割合が1:4:4くらいだったのも目がまんまるになったっけ。
「これって、もうサラダじゃないよね」
と苦笑しながらもそれはそれで美味しかったのを覚えている。
結論。アメリカで売っているお菓子やケーキの甘さを
「歯が溶けるぅ~!」
と感じなくなったり、真っ青いアイシングを躊躇することなく食べられるようになったらあなたはもう一人前のアメリカ住民だ(笑)。
息子が大好きなCG5の一曲、主役は「卵」!☟