社長に直談判
私が7年勤めたイーストビレッジのレコード会社はインデペンデント(メジャーなレコード会社やそのグループに属さないもの)では大手だった。就職する以前に学生のインターンとして働いていた頃は歩くと木の床が軋むような古くて小さなオフィスだったが、大学院卒業と同時に就職して正社員として戻った時には綺麗で大きなオフィスに移っていた。設立者でもある社長が明確なビジョンを持っている上に優秀なチームに支えられ、その後暫く右肩上がりの業績が続いた。
大学院を卒業する直前にインターナショナルのマネージャーが辞職することになり、以前インターンとして働いていた私に会社の方から働かないかと声をかけてくれたのは驚くほどラッキーなタイミングだったし有難いことだった。そんな流れで何ともスムーズに、就職活動というものを一切せずに業界での職に就くことができたのだった。
さて、アメリカで就職を経験した人や希望する人はご存知だと思うが、現地で働くにはビザの問題がかなり面倒臭い。私の知り合いでもビザのスポンサーが見つからずに日本に帰国せざるを得なかったという人が多い。会社の側からすればビザが必要な人間を雇うには経済的・時間的・労力的負担がかかるのだから、どうしてもその人材が必要でない限りはアメリカ人や既にビザを持っている人を優先して雇うのが当然だ。
じゃあ私の場合、どうしても私という人材が必要で会社がビザのスポンサーになってくれたのか?そうだったら光栄なのだが実はそんなことはない。ただ会社とかなりのご縁があったのと、当時の私には相当の勢いがあったから社長の部屋に直談判しにズカズカ入ってきた新入社員のそのあまりの勢いに社長も
「うん、いいよ」
って言ってしまっただけに違いない、笑。更に、アメリカ人以外で雇ったのは私が初めてで社長もあんなに面倒なプロセスが待っているとは思わなかったんだろうな。私ったら本当にラッキーだわ。でも、周りの日本人の方々から
「ビザのことだけは早めに動いた方がいいよ」
という有難いアドバイスを頂いていたのもあって、入社わずか一週間で社長の部屋に直談判に行った私も今思えばあっぱれだったと思うのだ。我ながらなかなかの肝っ玉だ。
何か本当に欲しいものや成し遂げたい事がある人ってそういう勢いと情熱的なパワーが全身から出ているから自然とうまくいくんだよね。ニューヨークは磁場が良いなんて聞いたことがあるけれど、そもそもあの街は何かを成し遂げたくてやってくる人々の上向きなパワーが集まっている場所。あの街であの感覚を味わったあと違う土地に行くとかなりのギャップが生じる。けれどね、いつまでも、どこにいても、いい意味で Go Getter(自らの手で欲しいものを掴み取る人)でありたいと思うのだ。
思えば夫と出会えたのもラッキーでした☟