カレー嫌いの夫

ホームステイの時代も含めてアメリカ滞在中によく作ったものにカレーがある。子供の頃から食べているカレーの味が無性に恋しくなったとき、ありがたいことに和食の食材が手に入りにくい田舎でもアジア系のお店に行けば必ずと言っていいほどルーは売っていた。ニューヨークでは日系や韓国系のスーパーでいつでも購入できた。アメリカ人や他の国々から来ている友人たちにもウケが良くて、パーティーや夕食会など人と集まる場でよく作ったものだ。

夫もカレーを作ると喜んで食べた。「ある事件」が起こるまでは。ここまで読むと感のいい方は話の方向性が何となくつかめてくるのではないだろうか。「カレー大好きだし、これからも雑念なく美味しく食べたい!」という神経が細やかな方、もしかしたら今日の話は読むのをお控えいただいた方がいいかもしれない(笑)。

息子が生まれた直後、近くの小児科に定期健診と予防接種に行くことになった。夫は2週間の産休を取ってくれたので、第1回目の健診は親子3人で行くことができた。

生まれてまだ1週間かそこらの息子を連れ、ファミリーでお散歩がてらの外出だ。秋の柔らかな日差しの中、緊張と喜びが一緒になったお出かけ。息子は元気そのものだったけれど、ひとつ、心配なことがあった。

マンハッタンはトライベッカにあるクリニックには数人のドクターがいたが、担当してくれたのは若くて優しい女性のドクターだった。ご自身の育児経験を交えて色々とアドバイスをしてくれるので安心して相談できた。

「この子、まだ一度も便通がないんです」
と心配事を伝えると、
「あら、それはちょっと困ったわね。ちょっと待ってね」
ドクターは部屋を出ると小さな使い捨てカイロを持って戻ってきた。それを息子の足に当てて少し温めてから近くにいた夫にカイロを手渡して
「しばらく温めていてね」
と言うと、今度は息子のお腹をゴニョゴニョとマッサージし始めた。マッサージすること数分、ドクターは息子の足をそのまま温め続けるようにという指示を残して再度部屋を出て行った。

待つこと数分。
「ん?」
息子の小さなオムツの中で変化が起こっているのが明らかにわかった。夫と私は顔を見合わせて
「出た!」
と喜びの声をあげた。そして、新米パパママがオムツ替え(大の方)の腕を試される時だという事にも気付いたのだった…。

夫はカイロを手にしているし、自然と私がオムツを外す係になった。この時、足を温められてマッサージもされて血行が良くなった息子のお腹は絶好調!の状態になっていたに違いない。説明はいらないと思うが、たまっていた1週間分のう◯ちくんが一気に出てきたのだ。

もう一度警告する。カレーもそうだけど、ソフトクリーム好きの方にもキツイかもしれない。でもここまで読まれたならもう遅い気もする。ごめんなさい。

息子のう◯ちはソフトクリームマシーンから出てくるソフトクリームのようにニョロニョロ~と、しばらく出続けた。こういうのって、男性の方が苦手らしい。
「うわ~、よく出るね~」
ひたすら感心して見ている私とは違って、この光景は夫にはトラウマとなってしまったようだ。この日から2~3年、私にカレーを作る機会は訪れなかった。私の脳裏には気持ちよさそうにう◯ちをする生後1週間の息子とその足元で
“Oh, my, God!”
を連発する夫の光景がコメディの一場面のように焼き付いている。

 いつ思い出しても「ふふっ」と笑ってしまう。7年経った今では夫にとっても笑えるエピソードになったらしいし、カレーも食べられるようになってきた。ただ、
「今日はカレーね」
に対して事件前のような
「わーい!」
というリアクションではなくなったというのはご想像がつくだろう。その隣で
「わーい!」
と無邪気に喜ぶ、何も覚えていない7歳の息子がいる。

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